CASE 32 『ハートフルレント』は“ハートフル”にこだわる!!!

事例編 ケース32
◎キーワード:やっぱり・・・戸谷『ハートフルレント』を求めてくれるオーナー様と仕事をしたい!

オーナー様と借主の立場の違い・・・これは様々な所に表れます。
賃貸市況が低迷している時代はオーナー様の募集希望賃料と借主の希望条件はかけ離れていることは確かです。
これはどちらも財布の紐が厳しくなる上に、「貸す」「借りる」という立場が逆なのですから、金銭を「もらう」「払う」という立場の相違による利害関係からよくあることです。
お互いの立場の違い・・・特に借主は権利の主張(だけ?)を強くする時代なので、私達のような仕事・・・オーナー様と借主というその立場の異なる考え方の相互の権利の調整役としての『賃貸運用管理』という仕事・・・が成長してきたのだと思います。
時代が変化してきた時代の流れだからこそ 私達の業界が成長し成熟してきたということです。
しかし・・・それ(お互いの主張)が、余りに度を過ぎてくると???・・・感情をどこにも向けることが出来なくなることで不満や本音が爆発します。
時に 私達にも思わぬ言葉の攻撃が飛んでくることがあります。お互いにそれぞれの強い思いがあることを分かっているので、たわい無いことは大抵は気にしないで 右から左に受け流すことが出来ますが・・・その類の話しに慣れているということもあるのだと思います。
が・・・しかし・・・今回はそういう訳には行きませんでした。
そして・・・それが・・・今回のお話のテーマです。
さて、本題・・・です。
世田谷区に居住するオーナーのB様は、もともとは官庁にお勤めだったようです。
定年退職が近くなったこともあって今後は少しでも賃貸収入でも上がれば・・・ということで平成15年に賃貸併用住宅を建築しました。その後 ある金融機関からの紹介で10ヶ月程前に当社で管理受託をすることになりました。
1階は自宅、2階に3室と3階に3室の賃貸スペース(計6室)です。
世田谷区内の閑静な住宅地、私鉄の人気ある駅から10分(募集上の「80mを徒歩1分」という机上でのことではなく、実際に駅の改札口よりゆっくり歩いての10分)という立地に建っていましたが、やはりここ5~6年で濫立してきた駅近(徒歩2~3分圏内)の投資用の分譲マンションが、いつもお部屋探しのお客様からは比較対象物件となっていました。
分譲タイプの1DKや1LDKは、セキュリティ面や設備充実を謳ったオートロック仕様や宅配ロッカー完備、また立地面においては大通り沿いに面していることが多いですが、高層物件ということもあって見た目も華やか・・・。使いやすいキッチン、広いリビング、収納スペースの充実等、暮らしの快適性をアップする工夫が随所に盛り込まれ、室内の内装・設備類も今時のお洒落で優れモノが多くなってきていて、当物件においては競争力としてもやや劣る流れとなっていました。
建築後は、独立系のある管理会社にお願いしていたようでしたが、突然 サブリース(一括借上げ)契約を解除されたとのことで、その後は当社がお手伝いすることになったのです。
当物件は、1階にオーナー様が居住ということで、地方から上京してきた学生さんや若い女性の親御さん方からは安心されて支持されることも多かったのですが、最近の若者(こういう言い方をすると、“だからオヤジなんだ!”と言われてしまいます・・・)は、同じ屋根の下に(たとえ隣接地であっても)オーナー様が居住していることを快く思わない傾向が強いこと、また 更に近年の不況のせいもあって、地方からの東京へ引越しするにも それに掛けられる費用が減少している・・・給与にもそれ程余裕がない・・・当物件が いかに人気のある私鉄沿線の世田谷区内ではあっても、9万超の賃料を負担出来る家計が少なくなってきていました。
その為 ここ2年程は賃料も10㌫以上は間違いなく下がった相場のエリアとなり、その上で更に、口を揃えて賃貸条件の交渉をしてくる借主が多い時代なので、独立系の管理会社はサブリース契約を突如解除し、結果として厳しい状況を強いられていることになったようです。(心情的にはオーナー様の気持ちもサブリース会社の気持ちも理解出来ます。)
そこで 金融機関からの勧めもあって、当社では「サブリース」という形態ではなく「集金型」の管理形態に基づき業務を開始することになりました。
早速、東日本不動産流通機構『レインズ』の登録や、不動産情報ネットワーク『アットホーム』への情報公開を始めとして、当社と提携している客付専門の不動産業者の協力を貰ったりして借主の確保に努めてきました。
実は、今回のこのケースですが・・・私は最初にこの物件を見た時に大きな問題点は把握出来ていたのです・・・。
「1階にオーナー様が居住。庭でいつも季節の花々や緑の木々を育て、2階・3階への賃貸スペースの目の前にオーナー様の所有する駐車スペースがあることで、オーナー様の存在感が強すぎる」ために、借主から敬遠されがちであったことが推測出来ました。
やがて、僅かの間に全6室の内4室の賃貸スペースは次々と退出という事態が起きました。
理由は、3件は「条件の安い分譲タイプのマンション」へ移転、もう1件は「同じ賃料ならば広い物件」へ移転というモノでした。更に、その中の会社勤めの24歳代の女性と21歳の女子大生は、どちらも駅近の分譲タイプのマンションへの引越しでしたが、(オーナー様には言って欲しくないという前置きがありましたが・・・)正直言って落ち着かない・・・いつも見られているみたいなので・・・という本音が出て来ました。
時期は多少ずれてはいましたが、1ヶ月に1世帯のペースで解約者が出ました。
それでも1室は何とか入居者の確保は出来ました。しかし・・・一旦始まった退出の流れは容易には止まりませんでした。
一度に退出するということではありませんでしたが、2年間の賃貸借契約が満了する際に更新をせずに退出していくという現象です。何としても“空室となった3室に良い入居者を”を合言葉にして社員も皆頑張っていました。
退出すれば居住期間が短いので、借主の負担でクリーニング費用等は負担してもらうにしても、経年変化の部分迄の請求は難しいので、ここで多少なりともオーナー様の原状回復費用も掛かります。そして 何より賃料という収入が入ってきません。また いくら世田谷区内とは言っても、徒歩10分ということで より駅近の競合物件も多いことで退去後すぐに入居者が決まるということもままならない状況であることは周知の事実です。
その上 ここ数年の賃料下落により建築当時の平成15年の建築時の収支のシミュレーションとは大きくずれが生じてきました。
現在の借入れ利息は低いとはいうものの、築9年超ということで様々な修繕費用も掛かる時期とも重なってきたのです。
最後?の(4人目の)お客様が退出したのは8月25日でした、もともと建築当初から構造的なことでややカビが発生しやすかったということもあって、退去をするとクリーニング費用は借主さんに負担してもらってきていましたが、クロスの張替えはオーナー様が負担するので一時的な持ち出しも多くなってきました。
更に 2室においては解約予告期間中にエアコンの不調が発生・・・メーカーが修理に行っても、修理には何万円も掛かり、その上またいつ壊れてもおかしくない状況とのことで、退出間際になって2台とも交換ということも重なりました。(今の時代はエアコンが使えないことは絶対に避けなければならないので、当社ではまずこれが最優先としてオーナー様にお話して対応をしました。)
さて、最後?のお部屋の8月25日の退出後、5日間で居室内のリフォームは完了し、9月~10月に掛けて何としても成約しようと社員もあれやこれやと考えていたと思います。
いつでも案内可能な状況となりました。
当社と『管理委託契約』を結んでいるオーナー様には、募集における「仲介状況報告書」を提出していますが、とにかく案内は週に3件以上あるものの、申込みにならない・・・理由は駅近の分譲タイプの方が設備も新しく、何よりも空室物件の増大によって賃貸条件が大幅に安くなった事で苦戦は続いたのです。
最終的に申込みに至らない理由についても、オーナー様には幾度となくお話してきました。
オーナー様の希望賃料は9.5万円、礼金2ヶ月、敷金2ヶ月・・・でも 当社からの提案条件は8.8万で募集(但し間違いなく条件交渉はあるので多少の減額幅は持っていて欲しい旨)と礼金1ヶ月、敷金1ヶ月(特に礼金については0(ゼロ)の交渉もあり得る旨)、どんなに時間が掛かったとしても 早く申込み受けないとあっと言う間に何ヶ月も経過してしまうこと、併せて現在 市場に出回っている他物件の賃貸の空室を提示してお話してきました。
しかし、どうしてもその溝(現在の市況とオーナー様の思い)が埋まらないという事実もあったのです。私も何とかオーナー様の希望で(程近いところで)申込みを受けたいということで、社員にもオーナー様の苦しい胸の内について話をして 何とかしようと懸命でした。退去後1ヶ月が経過する9月25日に、一度は正式な申込みになったものの、調べると他の物件を滞納して退出を余儀なくされてきたお客様だということが分かり、当社からお断りしました。
オーナー様からは、“何で折角の借主候補者を断るんだッ。!!!”とお叱りも受けました。
しかし、賃料の支払いを滞っているという事実があるのに、そのまま賃貸借契約を締結することは私達の仕事上のモラルから、また これは経験則からですが、入居者のその後の日常生活においての使用方法等の問題が起こりうるだろうことが予想されたので、話しを進めることなど出来る訳はありません。以前にもお話したことがあるかもしれませんが、「空室のリスク」より「滞納のリスク」の方がオーナー様にとっては はるかに大きいのでそれをみすみす見過ごすことは出来ないのです。
さて、そんなこんなで私達も物件情報として、お部屋探しのお客様の眼にいかに触れるかに力を注ぎ、提携業者とも幾度となく顧客紹介の依頼を行ってきました。そんなある日(10月6日)のこと・・・私はオーナー様宅に呼ばれました。
現状の市況はこうであるということで幾度となくお話してきた私も オーナー様の胸の内は痛いほど理解はしてきたつもりでした。
当日は、私とオーナー様夫妻と3人でお話することになっていました。実は・・・いつもは表に決して出てこない奥様が、私の携帯電話に当日の朝、“今回は、主人が失礼なことを言ってしまうかもしれないので、私も同席させて下さい。”と事前に℡があったのです。
(これは叱られるな)と自分でも覚悟を決めて(今の時代はいつも叱られることも多いので慣れていますが・・・しかし、叱られることに慣れているということも また問題ではあるのですが・・・トホホ)、それでもこれからも何とかお力になれれば・・・という思いで席についたのです。
席上、私からは、まずは、
① なかなか成果として良いご報告が出来ないお詫び
② 「世田谷区内の人気のある私鉄沿線最寄り駅」ということで立地的には問題はないので、以前から提案してきた賃貸条件の見直しをすることで前向き具体的な話しとすることが出来ること、そして これからの募集における設定条件、条件幅等について
③ 平成15年の建築当初のシミュレーションの見直しの必要性
についてお話しました。
しかし、なかなかご理解出来ないようでした。どうしても 元の賃料のままで入居者を確保して欲しい・・・というオーナー様の強い意向は、以前から変わることなくはっきりしていました。
オーナー様からは、
① “どうして自分の希望条件で決まらないのか?この物件は他の物件よりもイイだろうに・・・”
② “確かに空室が多いのは駅から歩いて自宅に来る途中でも かなり多くの数の空室があることは分かるけれど、私の物件はあの物件より設備・仕様が優れているはずだろうが・・・。”
③ “1階にオーナーがいることは大きなプラスだろッ!”
(この気持ちは分かります。確かに物件としては悪くはありませんが、マイナス面もあることはオーナー様には見えない?というより見たくないはずですから・・・。)
とにかくオーナー様には現状をもう一度伝えて理解してもらうほかはあるまい・・・というのが私の使命でもありました。
しかし・・・奥様が心配していたことが、私には次第に分かってきたのでした。
私は大抵のことは我慢出来ます。・・・というより我慢します。
少し話はそれますが・・・時には、ヤクザまがいなのか本当にその世界の人なのかはともかくも そういう風体の人が出て来て“オイ、コラ!・・・この野郎!”呼ばわりされることもあるし、まるで映画の世界のような入れ墨のお兄さんが出てくることもあります。
また 滞納者と話しをしていて逆ギレされることもあります。
時代が時代なので そういう人との対応も出来なければこの仕事は務まりません。(当然ですが、私達はそういう方々との積極的なお付き合いは一切ありません。)
勿論 そういう方々とお話する機会がある時は出来るだけ公衆の面前、例えば ファミリーレストランとかで話しをすることになりますけど・・・ね。しかし、今回はなにがあっても官庁勤めのお役人出身です。そのような心配は全くないのは百も承知でした。
しかし、どんなに説明しても理解してもらえませんでした。隣にいた奥様も“戸谷さんの言うように、賃料を見直しした方がいいんじゃないですか?”
“バカやろう・・・オマエはだまっとれ!”と段々テンションが上がるばかりでした。
やれやれ奥さんも気の毒だなぁ・・・と思っていたその矢先のこと・・・次の瞬間、私の眉毛がピクリと動きました。
“大体・・・不動産屋なんてモノはオーナーの言う通りにやればイイんだ!もともと不動産屋なんてもんはなぁ・・・ヤクザな仕事なんだ・・・役人の俺達からしてみれば、悪い人間ばかりなんだから・・・。だって千三屋(センミツヤ)だぞ・・・1,000の内3つしか本当のことを言わないからセンミツヤって言うんだろ!!!市場のことをいろいろ言う前に、そもそもが人のふんどしで飯を食ってるんだから、何も言わずに動けばイイんだよ・・・。”
すかさず、奥様は“アナタ!それは言い過ぎです!!!”
とは言ってくれたモノの、私は黙って席を立ちました。本当に無意識のうちに沈黙のまま立ち上がったことをハッキリと覚えています。
そして、“誠に申し訳ありませんが、私はアナタの賃貸経営のお手伝いは出来ません。”とお話してその場を後にしました。(その日の内にお預かりしていた鍵や書類は全てお返ししました。やること早ッ!)
傍から見れば 私は少しばかり軽率な対応だったと思われてしまうかもしれません。
しかし、『ハートフルレント』には『ハートフルレント』の仕事の仕方があります。
勿論 会社に戻って社員には事情を説明しました。私は、これまで一生懸命に対応してきた社員には申し訳なくも思ったのでした。
この誌面上、オーナーB様の言葉はこの程度に留めておきますが、実際は 語気はもっと荒く、その場の空気はと言うとそのスジの方々と話をしているのと同じような耐え難いものがありました。そして、それは私達 管理会社(というより『ハートフルレント』)にとって許されることのない暴言であったことを、社員は理解してくれたと思います。
“そんなプライドは捨てて仕事をすればイイんだよ・・・。”と言う方もいるかもしれません。それも一理あります・・・。
(とんでもない・・・そんなことは出来る訳がない。それに もともとプライドなんて高くはありません・・・。)
また、社長なのだからここは我慢して・・・という声もあるでしょう。
(我慢はいつもしています・・・。)
でもね・・・皆様・・・私はこれでもかなり気が長いほうだと思うのですよ・・・。滞納者には厳しいですが、少なくともオーナー様や良い入居者様に対しては、目線を同じにすることが必要なので、優しい?対応が出来る・・・のです。
私達はどれだけそのオーナー様や借主さんの気持ちに近づけるかが 仕事をしていく上での重要な尺度です。
そして 反対に、オーナー様がこちらのやろうとしていることをどれだけ理解してくれているか・・・という前提でのお叱りであれば、私はきっと我慢して気持ちを取り直して取り組もうと思ったかもしれません。少なくともその瞬間迄・・・その時迄はその気持ちでいっぱいだったことは事実です。
その後 奥様はお詫びに当社迄お越しになりました。
“戸谷さんは、何であの時怒らなかったのですか?”と尋ねられました。私は、“私の心が理解されていなかったことが分かったので、何も言うことはなかっただけですよ。”と答えたのです。
(奥様には申し訳なく思います。本当にゴメンナサイ!しかし やっぱり私には出来ません・・・。)
私は今回のこの対応が必ずしもベターであったかは正直分かりません。しかし やはり『ハートフルレント』は、人と人との心の繋がりで仕事をしているので、今回はお断りすることにしました。
私は今回のことを後悔はしていません。
さて、時々“大家のくせに・・・”という言葉を言う賃借人がいます。特に、これは 実は 滞納等の賃借人からはよく出るフレーズなのですが、賃借人がもし仮にこのような悪態をついた時は、オーナー様を守るために私達は立ち向かっていきます。それは、オーナー様の苦悩が手に取るよう分かっているからです。
皆様にお聞きします???
銀行にお勤めの方に“銀行員のくせに・・・”とか
八百屋さんを営んでいる方に“八百屋(さん、が付けばまだしも)のくせに・・・”とか
農業に従事している方に“農家のくせに・・・”とか
その上にあれやこれやと・・・面と向かって暴言を吐かれたら・・・皆様だったらどうでしょうか?
とかく、単純な金銭出入りの数字のみが先行することばかりで、オーナー様と向き合うことが少なくなってきている(・・・というより出来なくなった業者の人間が多いのだと思いますが・・・)仕事のやり方が主流?となっている時代なので、私達のようにがっぷり四つに組んで仕事をしようとしているからこそ、今回のようなことが起きたのだと思います。
まぁ~戸谷(ハートフルレント)には戸谷(ハートフルレント)に合った・・・戸谷(ハートフルレント)を求めてくれるオーナー様と仕事をしたいと思っています。
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当社では、併用住宅の物件のオーナー様は多数います・・・。例えば4階建て併用住宅の最上階に居住されているオーナーS様は、入居者がオーナー様と感じない程に静かに(入居者と関わることを極力少なくして)居住していることで、「併用」というマイナス・イメージを作らないために高い入居率を維持している物件もあります。確かに、併用住宅や隣接地にオーナー様が居住していることについては 難しいことも多々もあります。
しかし、オーナー様の自宅にプラスαの附属した形での賃貸住宅を作るという発想ではなく、オーナー様が入居者の居住スペース(プライバシー等)をしっかりと守ってあげると考えた上で建築したモノや、そういうスタンスで取り組んでいるオーナー様の物件は、その入居率には大きな開きが出ています。
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