CASE 29 二代目オーナーの苦悩と勘違い 第五章

事例編 ケース29 最終章(全5章)
◎キーワード:関わる全ての人の「意識」がプラスに転じることが成功の秘訣。

さて、第三章の下りの部分「しかし…担当者(社員達)は違ったのです。」のお話しをします。オーナー様がそういった姿勢でいることで借主だけでなく、当社の担当者迄もが『疲れてきてしまう』という問題も引き起こします。
この『疲れる』ということ…肉体的な疲労ではなく、精神的なモノです。
“この人の為に何とかしてあげたいという気持ち”が失せることです。
借主から会社への連鎖…感情の負のスパイラル状態に陥りました。現在入居中の借主からは“先代のお父さんやお母さんのためならば…。”という言葉が出ていたので、それを二代目のAさんにもそうなるようにしたかったのですが、それが出来ないばかりか、当社の社員に迄もそういう気持ちにさせてしまったのです。
だから、少なくとも当社の担当者の気持ちのズレ…つまり借主と同じようなそういった気持ちになりそうになった時に、そうさせないことこそが私の社長としての仕事だったと思います。ここで、私は社員達と向き合いました。
私達の仕事というのは、オーナー様と借主のバランス(均衡)を保たせることがその基本であること。そして時には、立場の異なる両者の板ばさみになることもあるかもしれないけれど、それが私達の本業であって管理業務の真髄であること…。をじっくりと話したのです。
そして、皆がそのことを理解してくれたことで、今では何とか社員の気持ちの「負のスパイラル」状態は抑えることが出来ました。もしあのままの状態だったらどうなったでしょうか???こうなると、“何とかしてあげよう”という気持ちが薄れてきます。失せてきます。そして、それは入居率のアップとは反比例してきます。結果として、オーナー代行の使命である、運用率を高めることが不可能な状況となります。
◎現在では・・・またご両親が先頭に立って賃貸経営をしています。私達も、今迄の状況を踏まえて仕事をしていますが、私としてはこのオーナー様ご一家の今後がとても心配です。

<まとめ>
商品としての物件の完成度やその物件に見合った賃貸条件…これがまずは借主の心を捉えます。借主だって分かってはいます。どんなに希望は高くても100%完璧なお部屋などは決してありえないことは。これは人間(オトコとオンナ)と同じです。

その上で管理会社の対応の良さとか、近くにオーナー様が居住している場合にはその人柄とかが、借主の安全や帰属意識につながります。やがてはそれが尊敬の意識のようなモノに繋がり、最終的には自分の今後の人生設計における家探しのことや、自分の周りの大切な人の不動産話が出てくるのです。 実はこれが、当社が宣伝をしなくてもお客様が増えている所以でもあります。

しかし、当時『ハートフルレント』は設立10年目を迎えようとしていましたが、初めてと言っても過言ではない、難しい局面でした。

「社員のやる気喪失」という最悪の結果にはなりませんでしたが、社長として自分はそれほど気にしていないことでも、人の気持ち(借主や社員)にもう少し配慮しておけば良かったと思います。しかし、私もそうであるように社員達にも“この人の為に何とかしてあげたいという気持ち”だけで私達は日々の業務に取り組んでいるのは事実です。でなければ、賃貸借契約上における『悪』に対して真っ向からぶつかっていく力(パワー)は生まれないと思うのです。

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