CASE 28 二代目オーナーの苦悩と勘違い 第四章

事例編 ケース28 第四章(全5章)
◎キーワード:何が問題なのかを冷静に分析し、見極める事が肝心!!

この二代目のAさんのお話しの頃…2009年(平成21年)から2010年(平成22年)は本当に賃料下落が著しい時代でした。
表向きは賃貸条件が下がっていなくても、実は大きく条件交渉が可能な物件も多数出回りました。表向きの募集条件を下げることは現在の他の借主への影響もあるので、表向きは堂々と下げられないということもあります。しかし、まずは現実問題として借主確保の為にそのようなのんきなことを言ってはいられない時代でもあったのです。
「礼0・敷1」ならまだしも、「礼0・敷0」のゼロゼロ物件、賃料本体も7万円⇒5.5万円とか10万円⇒8万円と、大きく下げて成約した物件も少なくありませんでした。中には賃料45万円⇒35万円という条件変更で成約したお部屋もありました。
京王線の「笹塚駅」(新宿駅から1つ目の駅)の2000年当時の賃貸相場は、ワンルームは8万円でもどんどんお部屋が決まったものです。しかし、10年後の2010年(平成22年)の春先の単身者のお部屋探しの希望条件は6万円以下が殆ど…こういう状況でした。だから半年や1年の空室の物件も多くあったのです。
都内人気エリアの港区・目黒区・渋谷区辺りでも空室物件が過剰状態であり、今迄の条件のままでは申込みにならないということも多かったのです。
東京都内であっても郊外の物件や23区内においても徒歩10分以上等と言う物件は間違いなく苦戦を強いられました。(その状況は現在でも続いています。)ましてや、駅の乗降客が多いとは言っても、これは神奈川県での話です。

私も、Aさんにはいつもその辺りの話をしてきました。
戸谷:“Aさんの幾つかの物件は、築年も10年以上経過しているし、設備もやや古いということで他の物件の「当て物件」になっています。現在は築浅の物件でも表向きは賃貸条件は下がっていなくても、大きく条件を引き下げて申込みを受ける物件も多いので賃貸条件を下げましょう。もし、他の借主への影響を考えるのであれば、交渉幅を持った形で取り組みましょう。”
Aさん:“でも、まだ10年しか経っていないんだよ…。ここは神奈川県のこれだけの都市なんだから、どこかに必ずお客様はいるはずだよ…。だからそのままの条件で募集して下さい。”

◎またある時は、
戸谷:“募集賃料は12万円ですが、今の相場は正直なところ10万円に届くかどうかと言うところです。今予算的に9.8万円ならば借りたいと言うお客様がいるので、如何でしょう…。これからも空室が多い流れが続いていくので、このまま空室にしておくよりも、今は良い借主ならば入居してもらって運用させていくという考え方も悪くはありません。”
Aさん:“物件の近くに企業とか役所関連の建物が多くあるのでそこを訪ねて欲しいです。”

◎更に ある時は、
戸谷:“やはり…どうしてもお客様のニーズとかけ離れています。やはり条件の見直しが必要です…。”
Aさん:“条件が高いというのは感覚的・観念的なモノではないのですか…?。『アットホーム』へ写真を載せて下さい。それと、もっとお客様のいそうな場所を探して当たってください…。”
こんな感じが続きました。。。。
時には、近隣の成約事例や現在募集している空室情報を持参して比較対象をしてみても、この物件が他物件の引き立て役(他物件を申込みするための当て物件・比較対象物件)に成り下がっている現状をなかなか理解出来なかったようです。

前述のAさんと私のやり取りにおけるAさんの言葉から発せられる心情は私も十分に理解出来ます。しかし賃貸経営は、小手先の手段や方法ばかりに目を向けるのではなく、大局的・総合的な考え方によって将来を見極め、本来の目的を達成させることが最も大切なのです。小手先の戦術ばかりに捉われていると、賃貸経営の『本質』を見失ってしまうことになり、本来の目的とは違った方向に向かってしまう事にもなりかねないのです。私達は、そのために日頃から社会情勢や顧客ニーズに基づく市場性を常に観察し、冷静に判断・分析する事を心がけております。

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