CASE 26 二代目オーナーの苦悩と勘違い 第二章

事例編 ケース26 第一章(全5章)
◎キーワード:一生懸命やればやるほど空回りして、傷も深くなってゆく。

前回に引き続き、『二代目オーナーの苦悩と勘違い』のお話です。
Aさんの父は昔ながらの親分肌の人、街の世話人としての典型的な人でした。母は、昔のホームドラマにあった肝っ玉母さんのような江戸っ子。

父は、多少の損(賃料の未払いや遅れ)にも、また修繕については人の良いところを出して気前良く対応していました。勿論、人の言うことを信用しすぎるきらいもあって、私達が後で見た時には、“これはちょっと?”ということもあったのも事実です。夫婦2人とも昭和の時代の古き良き賃貸経営の実践者だったのです。
これに変わって母校の有名私立高校からその後有名私立大学を卒業したAさんは全くの逆でした。Aさんは、1つ1つを細部に渡って何事も確認していく慎重な性格です。両親の持っている土地・建物を守っていくには、それくらいにならなければ守れない…ということもあったのかもしれません。その気持ちが分からないでもありませんでした。
そして、どちらかと言えば全てを掌握しなければ気が済まないタイプでした。でも、Aさんは決して心がない人ではないことは私も理解していました。
しかし、何事も率先して自らが確認して行うAさんは、借主から数ある賃貸物件の周辺でいつも目撃され、借主は皆、先代とはどこか違う異様な空気を感じ取っていたのでした。いや、いつも賃貸物件の周りをウロウロしていた訳ではないのでしょう…Aさんはその数ある賃貸物件の内の1室に1人で住んでいましたが、教師を退職した現在では度々目撃されていたのです。
特に、今迄の両親とは違った動き?をするAさんに対して、借主はよりいっそうの注目をしていた為に、そう感じさせてしまったのでしょう。
◎二代目のAさんは・・・何を考えているのか分からない?
◎二代目のAさんは・・・怖そうだ…。
◎二代目のAさんは・・・賃料を上げたり、追い出したりしないだろうか?
といった内容のニュアンスで借主からも随分と連絡があったのも事実です。
“そんなことはありませんよ…とても良い息子さんで皆さんを守ってくれることを真剣に考えてくれていますよ!。”と私達はそう答えていました。
しかし・・・人の感情に重視して仕事をしようと心掛けている私達にとって、これは少しばかり大きな問題でした。
世の中の全ては、人の感情で流れます。進んでいきます。特に賃貸経営にはそれが強く反映してきます。
こんな例えを考えてみて下さい・・・ずっと好意を寄せていた人が突然自宅に来たとしても誰も怒ったり嫌な気持ちになったりはせず、きっと歓待するでしょう。
しかし、いきなり知らない人や快く思っていない人が訪ねてきたら、イイ気持ちはしないはずです。
二代目のAさんは決して嫌われていた訳ではありませんが、こういう気持ちが段々と借主に芽生えてきてしまいました。
私達も何とかAさんの良さを借主に分かってもらおうとして、また借主がAさんに対して、誤解をしないようにと、その言動や対応に気を付けていました。

それと同時に 私もAさんには、幾度と無く様々な話しをしてきました。①オーナーと借主の「立場の違い」や「借主の心情」について②オーナーと借主の「適度な距離感の必要性」について③場合によっての「即断即決の重要性」について等など・・・話してきました。入居者はあくまで“貸してもらっている”という気持ちが強いのです。

そして私は、(究極的な内容として)借主のAさんに対する気持ちのズレについてを、1つ1つ理解出来るように噛み砕いて話しました。

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